空しか、見えない
「大体、またみんなで遠泳しようかなんて、サチが言い出すとは、思わなかったよ」

「遠泳って、のぞむだって岩井ではいいね、なんて言っていたじゃないの」

 環の心配した通りだった。結局、のぞむは気まぐれなのだ。わざわざ深夜に電話をしてきて、まるで絡むような口調だった。心の中では、ずっと連絡があるのを待っていたはずなのに、佐千子の心は曇っていった。

「不愉快だな。急に帰ってきて、またみんなを振り回して」

「俺が何を振り回したの?」

 電話の向こうののぞむの怪訝そうな表情が、目に浮かんできた。
< 328 / 700 >

この作品をシェア

pagetop