空しか、見えない
「私、こんな風にビールを入れてもらったの、はじめて」

 のぞむにそう耳打ちすると、

「なあ、いいバーだよな」

 彼の方も小声でそう返してきた。

 シャツの前ボタンを開け、細身のシルエットだ。足下はレースアップのブーツで、着こなしている。
 佐千子の方は、自分に妙な期待を持たせないようにいつも通りの通勤着で来た。グレーのパンツに、白のシャツだ。
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