空しか、見えない
「冷たい雨だよ。まったく、冬だっていうのに嫌だね」

 短髪で長身の、バーテンダーの方は、まだ若いようだった。

「こちらへどうぞ」

 馴染みらしい客は、反対側の端の方へと通され、さきほどのバーテンダーがその向かい側に立った。

「改めて、再会に」

 のぞむはそう言って、佐千子とグラスを合わせる。
 すぐに話は弾まなかった。佐千子の方は幾つかニューヨークの暮らしについての質問を試みたが、本当はとても気になっているアパートメントの同居者については、触れたくない。そのことは訊かないようにしようとすると、どの問いかけも通り一遍になる。
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