空しか、見えない
 あれから折々その言葉に助けられてきた気がする。自分が無理な背伸びをしようとして疲れてしまうとき、物事がうまく進まないときにも、どこかで留守番していているはずの自分を思い起こす。飛行機のクルーになりたくて、ずっと夢見ていた頃を思い出す。
 せっかく夢を叶えて、憧れだった国に暮らし始めたのに、人を好きになったことでそんなに傷ついているんじゃ、可哀想だよね。昔の自分が、そう言ってくるような気がする。マリカは自分の胸に手をあてて、深呼吸する。まだ昨夜、彼と愛し合った体の熱が残っている。
 窓の外で、近くの教会の鐘が鳴った。
 日曜日の礼拝が始まったのだ。

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