空しか、見えない
 向こうのレーンでは、すでに千夏が気持ち良さそうに泳いでいる。
 月1万円の会費で、好きなだけ通っていいのだから、ジムは良心的だ。ここには、真新しいサウナもある。
 確かに自分は、心も体もすっかり緩んでしまっていたのだと佐千子は感じた。
 編集部ではいつまで経っても一番の新人のままだし、体だって誰に見られるわけでもなく、そこかしこに無駄な贅肉がついてしまった。

「何か、目標はあるんでしたっけ?」

 インストラクラーが、さらにそう訊いてくる。

「夏までに何キロとか、あるんでしたっけ?」

 質問が、さらに具体的になる。
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