空しか、見えない
「ねえ、大丈夫?」

 急に、のぞむの呼吸が荒くなってきた。息継ぎのたびに、ひーひーと息を吸い込む音が鳴り、呼吸が荒い。

「無理しないで、のぞむ」

 もう1時間は泳いでいる。潮の流れに逆らうように、湾内の沖、左へ左へと泳ぎ出たところだ。ここからは潮に乗って大きく右に旋回して、岸まで戻るとミーティングでは訊かされていた。でも、まだ半分にも着いていない。これから先が、体力的にはきつくなる。

「のぞむ?」

「ウァー」

 まるで獣のように、のぞむが叫んだ。

「無理なんて、するに決まってるだろう。俺は、そのために帰ってきたんだからさ。そう決めたんだから」
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