空しか、見えない
「あと、200メートル」

「よし、よし、あと100だ。もうじき、足が立つぞ」

 メガホンからのかすれた声は、いよいよ大きくなる。
 岸からはずっと遠く見えていた沖へ泳ぎ出て、沖からもまた遥か遠く見えていた岸まで。みんなが一緒だから、泳ぎきることのできた仲間たちだった。
 励まし合って、恐怖や力の限界を乗り越えて、帰ってきた。
 隊列の順に、最後は亀が歩むように砂浜へと腹這いに進み、最後の最後で立ち上がる。
 中学生の時には、先生方がアーチを作って待っていてくれて、バディは手を繋いで、その中へとジャンプインした。
 今日は、浜にはごじべえのおじさんとその娘がふたりきりで出迎えてくれている。いや、ゴスケも砂浜の上で尾を振って、走り回っている。
 腹這いを始めたハッチを見つけたごじべえのおじさんは、急いで、上陸した場所からアーチまでを帚で掃き始める。
 掃いた後に慌ただしく帚を置いて、娘と両手でアーチを作る。
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