異端の足掻きは月のみぞ知る
物理的な殺意(もの)は小狐丸にとって喰いづらいが、魔術に変換された殺意――いわば、“感情の渦”は担い手と同じように吸引ができる。
魔術を無効化するだけの“完全魔術耐性”を成す形は違えど、結果的には同じだった。
消すではなく、喰らう。
更に言ってしまえば、この時点において戦況は大きく傾いた。
「なんだ……?」
ジンが違和感を覚えたのは、草が剣を刃で弾いて防御し始めたからである。
一回目は偶然。
二回目はまぐれ。
三回目にしてやっと、“防御した”と認めた。
先ほどまで逃げ腰、へっぴり腰だった癖に、ジンに合わせ、“動けつつある”のだ。
あまりにも動きが違う。それは熟練者であるジンにとって取るに及ばない戦い方ではあるが、そも、素人がジンの剣を防ぎきっているのがおかしかった。