異端の足掻きは月のみぞ知る
「いけ」
狼が口を開け、こちらに向かう。
ちょ、まてまてと言う前に――何故か狼が消えた。
僅かばかりに残った火飛沫がこちらまで来るが、先生が腕を振るだけ消えてしまう火力だった。
「……何をした」
低い声音は明らかに主さんを不愉快にさせただろうに、だけど先生はさして気にせず。
「炎狼(フェンリル)の周り、炎狼自身の空気――酸素を消した。それだけだ」
なんか理科の実験で習ったような事象が起こったらしい。
「主、ここは私が」
前に出るお姉さんだったが、おいおいと先生は呆れた。
「帰らせてもらう。どちらにせよ、もうこの“世界”には来ないだろう。お前たちが私たちに関わるメリットは何もないぞ」