異端の足掻きは月のみぞ知る
帰る気満々な先生の指にはいつの間にか、小さな鈴が握られていた。
鈴から伸びる赤い紐を持ち、鳴らす。
「行かせませんよ」
お姉さんが剣を振れば、氷の柱がどんどんと道すがらにこちらに来た。
針のむしろとは言ったもの、寸分の狂いなく、連れていくというわりには殺す気なんじゃないのかい?とお姉さんのお茶目ぶりを見るほど、氷のトゲは僕たちを貫通した。
貫通、したのだ。
紛れもなく、トゲは僕の右肩を抜けて背中から生えている。
先生にしてもそうだが、平然な顔をしている分には僕と同じく痛みがないんだろう。
痛みがなかった。
僕たち自身がまるで残像のように、トゲはただそこに在るだけだった。