人の恋人は蜜の味。ーa traitor ー
半分だけ開いたドアの向こうにおったんと美沙が居た。
そう。
おったんの胸に寄り掛かり
頭を埋める美沙。
そして、
美沙を片方の手で強く抱きしめ
もう一方の手で優しく頭を撫でる
おったんが。
そこには
居た。
先に気付いたのは
おったんだった。
目が合った瞬間声よりも先に
体が反応したのかおったんは
ばっと美沙から体を離した。
顔を涙で濡らした美沙も
一瞬おったんに驚き見上げていたが
すぐに私達に気付いた様子だった。
「いや違うんだ!これは!」
「ゆーちゃん違うの!…あ…あの…」
おったんと
美沙の声が重なる。
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
5つの沈黙が広がる。
私は笑いをこらえるのに必死で俯いていたせいで
誰の顔も見られなかったが
横目に入ったゆーちゃんの両手は
僅かに震えていた。
不思議なもので
こんな時どちらとして
一歩も近付こうとしない。
「最低だな。」
張り詰めた空気を
切り裂くゆーちゃんの低い声。
「もういい。行こ、真琴。」
その震えた拳を開き
ゆーちゃんは強く
私の手を引いた。
去り際私は大袈裟に作った
悲しい顔を一瞬上げ
おったんと美沙に
無言のお礼をした。
ありがとう。
楽しませてくれて。