キミがいた夏~最後の約束~





「美鈴、私んちに来なよ!ね?」


そう言った綾香の方に顔をあげると、綾香はニッコリ微笑んで私の手をしっかり握ってくれる


その目は涙のせいで真っ赤になっていた



「2、3日…ううん、一週間ぐらいはなんとかなるよ」


「あ…そうだよ、俺んちにも来たらいい」


橘先輩は少し見えた光に微かに笑顔を取り戻していたけれど


私にはそんな迷惑を2人に掛けるなんて考えられかった


それにそんなこと長くは続かないだろう


そんな私の考えを読み取るような都さんの静かな問いかけが、再びその場の空気を曇らせた



「ねえ…みんな落ち着いて…そんな行き当たりバッタリの計画…
その後はどうするつもりなの…?」


「どうするってずっとそうしてればいいだろ」


「渚…」


「俺がなんとかするよ!」



橘先輩は出す意見をすべて否定されていく苛立ちを抑えきれないように語気を荒げていた



「渚…あんたんち老舗の呉服屋でしょ?
そんなところの息子が女の子住まわせてるって近所に知れたらどうなると思う?あんただけの問題じゃなくなるのよ?」


「かまわねーよ…そんなんいつものことだし…」


「あんたが言われるんじゃないのよ!親が…」


「あの…」



私が口を挟むと思っていなかったのだろう…


みんな、戸惑った表情で私の方を向く


ダメだ…


こんなの良くない…


私の為にここで争ってほしくない



「あの…ホントに家に帰ります…帰ってちゃんと話し合わないと…」



それを聞いて、橘先輩は自分の髪をクシャクシャにしながら悲しそうな顔で下を向く



橘先輩にはそんな顔…してほしくない



笑って



笑ってて欲しい



「美鈴ちゃんが一番大人って訳ね…」



ため息まじりで都さんが最後にそう言った言葉だけが、悲しげに響いた










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