俺様天使とのキスまであと指輪一個分。
「あおーーーーっ!!!」


蒼はもう、振り返ることも足を止めることもなかった。



先ほどいた屋上への扉を開けた。

黒い雨の槍に全身が痺れるような痛みが貫く。

必死に顔の前で手を覆うが、視界はほとんどなかった。


飛び上がり、黒雲の一番真ん中目掛けて上昇した。


加速を上げているつもりなのに、相変わらずの嵐と視界の悪さに、今自分がどこにいるのかさえ分からなくなっていた。

「お願い……アレオンの自然よ……私を通して…」

力を振り絞って風を掻き分けて、ようやくアレオン国全体を見渡せる空の一番上までたどり着いた。


地上を見た。


黒い海が無限に広がる死の世界。




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