恋をした悪魔
それから、青年とリリスの生活が始まりました。
青年は毎晩ミルクを用意してくれます。
一日一食で充分だと言ったのはリリスです。
青年はリリスが遠慮しているのだと思ったようですが、
事実、人でない体はそれで間に合ってしまうだけなのでした。
はじめは心配していた青年も、順調に回復していくリリスを見て
しだいに気に病まなくなっていきました。
なによりリリスがミルクを飲んでいる姿を眺めては
なぜだか嬉しそうに口元をほころばせるのです。
青年の気配は、日の出ている間ずっと離れの小屋にあります。
「画家になりたくて、修行中なんだ」
おかげでご覧の通り生活は散々なものだよ、と青年は笑います。
リリスには、その言葉と表情の矛盾が不可解でなりませんでした。
また青年は、たまに家の物を持ち出して森の外へ気配を消します。
こっそりと隠れてやっているつもりのようですが、
感覚の優れたリリスがそれに気づかないはずはありません。
家の中は寂しくなっていく一方ですが、リリスは全部無視しました。
下等な人間の行動に興味を示すなど、ばかばかしいからです。