接吻ーkissー
ドクン…と、心臓が不気味な音を立てた。

「――由、良…?」

私を見つめている由良の目が怖かった。

死んだの魚ような目?

…いや、そんな優しいものじゃない。

もっとそれ以上に怖くて、冷たい目だった。

「由良…ごめん、悪かった。

由良が話をしているのに違うことを考えちゃって…」

とりあえず言葉を並べて見るけれど、由良の目は変わらなかった。

「でも竜之さ…彼氏が、ホテルでピアノを演奏するの。

竜之さん、ピアノがすごく上手で…」

話をしようとする私を、
「聞きたくない!」

由良が叫ぶように言って、さえぎってきた。
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