接吻ーkissー
「どうした?」

「――い、いえ…」

まるで挙動不審みたいだ。

「今日の演奏、すごく自信がついたよ。

璃音のおかげかな」

菊地さんが言った。

――璃音

由良や家族が呼ぶのとは、また一味違っていた。

シン…と、まるで躰の奥の奥まで染み渡るような感じだ。

「呼び捨てで呼ばれるのが嫌か?」

そう言って、菊地さんが顔を覗き込んできた。

「――ッ…!」

ドキッと、私の心臓が大きく揺れた。

同時に、鼻に甘い香りを感じた。
< 19 / 238 >

この作品をシェア

pagetop