接吻ーkissー
そこまで話した後で菊地さんはニッと笑って、
「どうだ?

疑問は解けたか?」
と、私に聞いてきた。

「そりゃ、はい…」

聞いたのは私だけど、長々と話をされた訳だからね。

「菊地さん、すごい人だなって」

「俺が?」

そう聞いた菊地さんに、私は首を縦に振ってうなずいた。

「ピアノだけは捨てなかったんだなって」

「まあ、それが俺のルーツと言うか、生活の一部と言うか…何だろうな?」

ブーッ

その音が聞こえたのと同時に、会場が暗くなった。

「お、始まったな」

灯りが灯されたステージに視線を向けた。
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