今宵は天使と輪舞曲を。
まだ足りない。もっと彼を感じたい。そう思ったのも束の間、彼は何を思ったのか、突然身を引いた。
同時にふたりの間に冷たい夜気が通り抜ける。火照った体から少しずつ熱が引いていけば、若干の理性が戻った。
わたしはいったい何をされていたの? そしてわたしは彼に何を求めようとしていたの?
メレディスは自分を疑うように彼を見上げた。すると彼の目には欲望の炎がくすぶっているような気がした。
先ほどの口づけで未だ腰に力が入らない。メレディスの両肩は彼の腕によって支えられている。彼の口づけを思い出したメレディスは急に恥ずかしくなって後退った。その拍子によろけてしまったが、どうにか転けずに済んだのは幸いだ。
「わ、わたし……その……戻らないと」
我に返ったメレディスは誰に言うでもなくぼそりと呟くと、彼から背を向け、できるだけ足早に去る。
先ほどの口づけが忘れられないのか、背後にいるだろうラファエルからの視線を嫌というほど感じ取ってしまう自分がいる。
彼に触れられた後れ毛のあたりがちくちくする。足が震えてしまうのは初めての口づけだったのだから仕方がない。自分にそう言い聞かせながらメレディスは懸命に足を動かした。
「もう! まだ着かないのっ!?」
なんて広い庭なのかしらっ!!
会場からほんの少し離れているだけの庭なのに、こうも広く感じてしまうのは彼を惜しんでいる自分がいるからだ。