今宵は天使と輪舞曲を。
「なに?」
必死に口角を上げた。
部屋に戻ったら思う存分泣けばいい。
今は分厚い壁に囲まれた部屋があるのだから――。
メレディスは自分に言い聞かせ、この地獄のような時間を懸命に堪えた。
「メレディス、もしかして彼女がそうなの?」
深い青の目がメレディスを写し、彼女は小首を傾げた。
その姿も愛らしい。
彼女の何もかもに敵わない。
「ああ」
「すごく綺麗な方ね、わたしはアルバー・デュレイン。アルーって呼んでちょうだいね?」
ラファエルが頷いたのを見ると、彼女は手を差し伸べてきた。
いったいどういうつもりで彼女は手を差し出すのだろうか。
ラファエルは自分のものだという宣戦布告なのか。
決着なんて戦う前から既に決まっているのに――。
「わたしは――」
息苦しい中発する声は思いのほか小さい。
陰湿な自分にもうんざりだ。
「知ってるわ。彼から嫌と言うほど聞かされているもの。メレディスって呼んでも良い?」
いったい彼は自分のことを何だと彼女に話しているのだろう。
愛人だとか、とか見窄らしい女性だとか。
世の中の紳士は愛人がいること自体が珍しくない。男性としての器量でもあると女性は知っている。だから彼女はメレディスのことを最愛の男性の器量を上げてくれる存在だと思っているに違いない。
でも自分は違う。余所に愛人なんて作ってほしくないし、自分だけを見てほしい。仕事が終われば真っ直ぐ家に戻って来てほしい。メレディスの両親がそうだったように。