今宵は天使と輪舞曲を。
「彼女は父方の親戚従兄ベオルフの恋人なんだ。ただ彼は少し――女癖が悪くてね。こうやって母に会いに来ては愚痴を言いに来てるんだ」
「少し? 随分と控えめな言い方ね! 君が一番だ、とか言っておいて。悔しいったらないわ。ああ! 腹が立ってきた。日頃の鬱憤を叔母様に聞いて貰うんだから!!」
彼女は女性が普段口にしないような悪態をいくつか吐き捨てながらメレディスがやって来た道を突き進んでいった。
鳥のさえずりと木々の葉が擦れるそよ風の音。周囲にはふたたび静けさが戻った。
「それじゃあ、彼女は貴方の恋人じゃないの?」
穏やかな景色の中で、メレディスはぽつりと呟いた。
その言葉をはっきりと聞いたラファエルが強く首を振った。
「彼女が? ぼくの? それは……きっとぼくの手に余りすぎるんじゃないかな」
先ほどの言動からして、アルバーはとても気が強い女性のようだ。
同じ女性の目から見ると憧れてしまうが、ラファエルは違った。苦い記憶でもあるのか、くつくつと声を出して笑っている。その声が今までに聞いたことのない笑い声だったから、メレディスは胸が高鳴るのを感じた。
「嫉妬した?」
突然真顔になったかと思えば、彼のエメラルドの目がメレディスを射抜く。すべてを見透かされようとしているようだ。けれど彼の視線はメレディスを逃さない。逸らすことができなかった。
「そうね」
メレディスは観念して頷けば、ラファエルが視線を逸らした。
「ラファエル?」
どうして生活も容姿も何もかもが自分よりもずっと勝っている彼が逃げるのか。メレディスにはまったく分からない。