今宵は天使と輪舞曲を。

「とにかく、今からぼくの屋敷に来て欲しい」
 そう言った彼の表情はいつもと変わらない。決意の隠ったエメラルドの目がメレディスを写しだしている。
 今度はいったい何があるのだろう。
 彼は明らかに何かを決断している。その目は強い眼光を放っていた。
 けれども何を決意したのか、情報はあまりにも少ない。そして先ほどから驚きの連続だったメレディスの頭はもう考えることを止めてしまった。
 ぼんやりする頭で小さく頷けば、ラファエルに手を引かれ、馬に乗せられた。
 やって来たのは二階建ての立派な厩舎。以前にも見たことがある景色だが、建物の立派さは何度見ても圧倒されてしまう。彼は心底馬が好きだということがここをひと目みればすぐに理解できるほどだ。
 メレディスも馬が好きだから、大切にしている様を見るのもすごく楽しい。


「わたしに見せたいものと厩舎と関係があるの?」
 彼が育てている馬をもう一度見せてくれるのだろうか。
 メレディスが尋ねるものの、彼は無言のままで、何も教えてはくれない。
 メレディスは不思議に思いながらも彼の指示に従った。
 真っ直ぐ伸びた幾数もの部屋の各々には柵が設けられ、その後ろには毛波が整った美しい馬が一頭ずつ入っている。栗毛の子に黒い毛波の子。それにミルク色の子まで、体格も違えば種類も様々だ。
 どの馬たちも彼に懐いている様子で、どうやらおやつを強請っているようだ。彼らは口々に小さく鳴いてせがんでいる。


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