今宵は天使と輪舞曲を。


「だけど、人攫いの目的は何なの? メレディスをブラフマン家の人間だと思って攫おうとしたっていうこと?」
「いいえ、相手はわたしを探していたみたいなの。襲われる直前に名前を尋ねてきたわ。ラファエルの見解では人攫いを雇った犯人が外部にいて、わたしをこの屋敷から連れ出すよう仕向けたのかもしれないって――」
「それって金銭目的で攫うつもりではなかったっていうことよね、あ、ごめんなさい別に嫌味じゃないのよ? なんていうか……」
「ええ、わたしは没落貴族よ。お金はないもの。貴女が悪気がないことぐらい分かっているわキャロライン」
 キャロラインは、「ありがとう」とにっこり笑ってまた眉根を寄せた。
「人攫いの依頼人が誰なのかはまだ分かっていないのよね」
「ええ、そしてわたしを外に連れ出そうとする目的も何も分からないの」
「メレディスがここに居て都合が悪い相手っていうことは、犯人はグラン、あるいはラファエルの妻の座を狙っている貴族かもしれないわね。でもヘンね。わたしたちはあなたたちがこの屋敷に泊まりに来ることを公言したこともないし、唯一知っているとすれば、当時は家令や信用のおけるメイド長だけだったのよもちろん、口外も許していないわ――まあ、一部の人間は遊戯にふけていたみたいだけど――」
 他人のお金を勝手に遣って――。
 キャロラインは発言さえしなかったものの、メレディスには彼女が何を言いたいのかを理解していた。
「――ごめんなさい」
 メレディスにとって、キャロラインの言うところの一部の人間(・・・・・)がデボネ家を差してることを理解するのは容易だった。そして彼女らはブラフマン家の名前を盾に装飾品を買いあさっていた――。


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