今宵は天使と輪舞曲を。

 キャロラインは少し照れたようにティーカップに口を付けると、「でも、もしかすると兄さんたちがどこかよそよそしいのって、そのことと関係があるんじゃない?」と話した。

「それって何か手がかりが掴めたのかも! ……兄さんが黙っているということはあまり良い話ではないかもしれないけれど――」

「あともうひとつ。気になる事があって……」
「どうしたの? 乗りかかった船よ引っかかることなら何でも話して」
 キャロラインの言葉に、メレディスはほんの少しの間、笑みを作り、口を開いた。

「もしかするとラファエルはヘルミナを疑っているのかもしれないの」
「ヘルミナ?」
「ええ。彼、彼女の行動を頻繁に尋ねてくるの。ヘルミナは臆病な性格で長いものに巻かれるような娘よ、人攫いを雇うなんてそんな度胸があるわけないし、それに何よりわたしを攫ったとして彼女にどんな利益があるのというの? 有り得ないわよね?」

 キャロラインは、「う~ん」と呻ると顎に手を当てている。流石に兄妹だ。考える仕草もラファエルと似ていた。
「貴女の言うとおり。たしかにヘルミナは強い者の味方よね。度胸があるわけでもないわ、だけどわたしも気にかかっていたのよ。ラファエルと貴女が接近してからすぐでしょう? 貴女を不安に陥れるような話をわざわざしたのは――」

 ――たしかに。
 キャロラインの言葉に、ひとつ思い当たる節があったのを思い出した。


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