今宵は天使と輪舞曲を。
人攫いと出会す前、ラファエルの想い人は他にいるのではないかと不安を煽る言い方をしてきた。その結果、ラファエルと女性が一緒にいる姿を目撃して独りになったのだ。その後に例の事件が起きたのも事実だった。
「でもヘルミナは馬丁と仲が良いみたいよ?」
最近、よく馬丁と一緒にいる姿を見かけている。誰が見ても恋人同士のような雰囲気だ。その彼女がラファエルとメレディスの仲を引き裂いて何になるというのだろうか。それに、エミリアは明らかにジョーンをブラフマン家の人間と結婚させたがっている。たとえ血の繋がりがないとはいえ、メレディスの身に危険が及べば流石の彼女たちも安全のためにと、この屋敷に留まってはいられなくなるのも事実だ。そうなれば恋人であろう馬丁とは離れ離れにならなくてはいけないのは必定である。
「まあ、そうよね。――正直分からないけれど、でも兄さんが気にかけるくらいだから用心するに越したことがないかもしれないわ。何にせよ、ラファエルと貴女は一度会話した方が良いと思うの」
「そうね、逃げてばかりいても何も解決しないわね。一度ラファエルと話してみるわ」
「ええ、どうしても聞けないようならわたしも一緒に尋問するから言ってちょうだい。力になるわ」
メレディスには、キャロラインがラファエルに問い質し、彼がたじろぐ姿を容易に想像することができた。思わず苦笑してしまう。