今宵は天使と輪舞曲を。
「ぼくは本当に君が大切だと思っている。何より君が暴走するカインからぼくを救ってくれた時、君を心の底から愛していると改めて思い知ったし、今もぼくの気持ちは変わらない」
「じゃあ、どうしてわたしと一緒に居る時、貴方は上の空なの?」
ラファエルは自分のことをたったひとりの大切な女性として扱ってくれている。そう理解すれば、拒絶されるという怖さはなかった。メレディスの先ほどまでまくしたてるようだった口調が、ほんの少し優しくなるのを自分でも理解した。
それでもラファエルは黙ったまま、メレディスと視線を合わせようとはしない。顔を合わせているのにも関わらず、彼はどこか遠くを見つめているようだった。
「ラファエル」
メレディスは両手で彼の手を取り、そっと包み込む。ラファエルの手は冷たく冷え切っていた。
メレディスは根気強くラファエルの言葉を待ち続けていると、彼はようやく重い口を開いてくれた。
「ヘルミナが関与しているかもしれない」
ラファエルの思考はなんとなく分かっていた。それは数日前、キャロラインに打ち明けた内容通りだったからだ。
――ええ、そうなのね。メレディスはそう言って頷けば、彼の空いている片方の手を伸ばし、メレディスの手に添えた。視線は未だ虚ろなまま、どこに向けているのかは分からない。彼はそのまま静かに話を続ける。