今宵は天使と輪舞曲を。

「裏庭で話し込んでいるのは兄さんから紹介を受けた探偵だ。彼から街外れの宿で彼女が男と会っているらしい報告を受けた。もしかすると彼女が何らかの形でその男と密通し、君を陥れようとしているかもしれない。――それからもうひとつ、ぼくらが血眼になって捜していた人攫いの二人は現在牢屋の中だった。警察に面会を求めたが近々別の事件の裁判が行われるらしく、話ができない状態だった」

「ヘルミナが外で会っている男性は貴方が雇っている馬丁ではないの?」
 メレディスが尋ねれば、彼は静かに首を振った。
「――いや、身形はきちんとした貴族らしい」
 ラファエルに嘘をつくような素振りはない。メレディスはどうしてもヘルミナが今回の事件に一役買っているとは考えられなかった。

「ヘルミナは臆病で誰かを陥れようとするほどの気力を持つ娘ではないわ。それに、貴方の馬丁ととても良い仲のような気がするわ。それに、彼女がわたしを陥れたからといって、いったい何の得があるというのかしら」
 メレディスは彼に話すものの、ラファエルは断固として首を振り続けた。彼は続ける。

「たしかに、ヘルミナは単独で動けるようなタイプではないとは思うが、彼女の裏で糸を引いている男がとんでもない権力者で、何らかの理由があって君を陥れようとしていることも考えられる。これはぼくの勘だが、彼女を探れば必ず何か出てくるはずだ。忘れないでくれ、君はもうすぐぼくの妻になる女性なんだ。少なからずとも君を妬む者も出てくるのはたしかなんだよ」


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