今宵は天使と輪舞曲を。
男性は結婚に行き着くまでは年若い女性にのみ興味を持ち、その後は世間体を気にして妻と別れたがらない事実を――。
だからこそ、自分が若いうちに彼と結ばれなければならないのだ。
ヘルミナは、意中の彼へ相談を持ちかけるために急いで手紙を出し、そうしてようやく念願だった彼との再会を取り付けることができた。僅か数週間ぶりだったはずが、一年以上前にも感じる。
それくらい、ヘルミナの心は彼を渇望していた。
彼との待ち合わせ場所は、ブラフマン家から馬車に揺られて一時間ほど離れた、町外れにある"憩いの場"というパブだ。二階建てのそこは、一階がこぢんまりとしたどこにでもある古びた木製のパブではあるが、上階が宿泊もできる造りになっている。彼はしばらくの間、ここに寝泊まりするらしい。
屋敷の者には少し外をぶらつくと話してある。世間には彼と会っていると知られてスキャンダルになるのはごめんだったから、念には念を入れて麻で作られた茶色いフードを深く被り、使用人のような格好をしてブラフマン家の裏口から外へ出た。それから町外れまで向かう馬車に便乗させてもらい、待ち合わせのパブへ向かう。それでも貴族たちには自分の顔を知られたくなかったから、残り数キロのところで馬車から降りると何度も迂回を繰り返した。ブラフマン家を出た当初は、太陽はまだ真上にあったが、ようやく辿り着いた頃には陽は傾き、沈みかけている。待ち合わせ通りの時間だ。