今宵は天使と輪舞曲を。
§ 02***真相。
「メレディス、貴方に会わせたい人がいるの」
朝食が終わり、部屋へ戻ろうとしたメレディスを呼び止めたのはヘルミナだった。
これは罠だ。
メレディスがそう思うには訳があった。
今朝方、昨夕にヘルミナと共犯者に動きがあったと雇った探偵からラファエルに連絡があったのだ。
屋敷から出る直前までラファエルから散々ヘルミナには気をつけろと念を押されていた矢先ではあったから、流石のメレディスでも彼女を疑っていた。
けれどもあまりにもヘルミナの顔は真っ青で、悲壮感を漂わせていた。まるで何者かに追い詰められているように見えた。ヘルミナの策略はことごとく失敗に終わっている。もし、共犯者から次はないと脅されていたのだとすれば――自業自得ではあるが、憐れにも感じた。
しかし今日に限ってラファエルは外出しているし、キャロラインはブラフマン夫妻と共に会合へと出かけ、留守にしている。グランは大事な商談があるからと昨夜からこの屋敷にはいない。今、いるのは継母と義姉。それからブラフマン家を守る家令たちばかりだった。
本来であれば断るべきだ。
ひとりでヘルミナの誘いに乗るのは危険だと、本能も彼女にそう話しかけている。
昨日の今日だ。絶対にこの件と関係があるだろう。
――ヘルミナはわたしがひとりきりになる機会を窺っていたのかしら……。
メレディスの胸に不安が過ぎる。
しかし、である。
メレディスはいつ襲われるかを気にしながら過ごすのはうんざりだった。
――浅はかでも良い。