今宵は天使と輪舞曲を。
それでもこれで何か犯人の手がかりが掴めれば、もういつ襲われるのかを気にして過ごさなくても良いかもしれない。
たとえ罠だったとしても危機感さえ持っていれば、逃げることもできるかもしれない。
時計を見れば、もうすぐ九時になる。たしかラファエルは一〇時には戻ると言っていた。
万が一にでもメレディスが逃げ損なった時でも何か手がかりを置いて行きさえすれば、あとは彼が必ず見つけてくれるだろう。
お互いに愛し合っているという自信からなのか、メレディスはラファエルを信頼していた。
愛というものは不思議だ。彼を想うだけで、メレディスを強くさせてくれる。
「わかったわ」
メレディスはひとつ頷いた。
「でも外出するのに相応しい格好をしたいから少し待ってちょうだい」
メレディスはヘルミナにそう話した。彼女はやはり共犯者に脅されているのか、一度口を開き、メレディスの提案を退けようとしたが、もしこの提案を拒めばメレディスは行かないと言い出しかねないと判断したのか、ヘルミナは渋々頷いてくれた。
彼女は早く外に出たがっているようだ。やはりメレディスを陥れるために動いているようだ。
そう確信したメレディスは、邪魔者が入らないよう部屋に鍵をかけると、紙の上にペンを走らせた。
メレディスは、ヘルミナと一緒に屋敷から出ること。みちしるべになるための手がかりを道に残しておくこと。それらをメモに書き記し、ナイトテーブルの上に残した。