今宵は天使と輪舞曲を。
とたんに彼女はわあっと声を上げ、ルイスが攫ったと打ち明けた。彼女はルイスによほどのショックを与えられたのか、地面に頽れたまま泣き叫ぶばかりで動く気配もなかった。
ラファエルはメレディスを助けに向かうため、屋敷を出た。
ルイスが彼女をたぶらかすにしろ、人里離れた場所でなければならない。遠出をするためにおそらく彼は馬車に乗るため、この先にある小径に出たはずだ。周囲を見渡していると探偵が長く続く四つの車輪の跡を発見した。
しばらく進むとそれが証明される如く、メレディスのブローチが落ちているのも確認できた。忘れもしないこのブローチは両親の形見だと、メレディスが泣きながら話してくれたもので、ラファエルも躍起になって探した代物だ。
――メレディスをルイスに会わせるため、馬車はこの先の森に向かったのだ。あそこにはたしか、使われていない小屋があるのをぼんやりと記憶に残っている。
ラファエルは馬車を拾い、荒れ果てた小屋に向かった。半開きの腐りかけたドアを開け、中へ入ると、しかしそこにはすでにもぬけの殻で、誰も居はしなかった。けれども真新しい小花柄の白いエプロンが無造作に落ちているのを発見した。
間違いない。
メレディスのものだ!
《悲愴・完》