今宵は天使と輪舞曲を。

§ 04***運命の男性。




 メレディスは猿轡をされて悲鳴も上げられないうえに、ルイスには体を拘束されていたからラファエルに目印さえも落とせない状況になった。
 いったいどれくらいの間を馬車に揺られ続けていただろう。メレディスが馬車から降ろされたのは、到底お世辞でも大きいとは言い難い、木々に囲まれた屋敷だった。

 両腕を拘束されたまま前に推し進められ、屋敷の中へ入る。するとすぐにふたつに枝分かれした長い廊下が現れた。言われるがまま左手に進めば、そこはベッドとナイトテーブルのみしか存在しない殺風景な寝室だった。この先に行けば危険だ。きっとルイスの思うがままにされる。

 メレディスは中へ入るのを躊躇していたが、ルイスに力尽くでベッドに押しやられた。仰向けのまま両腕をさらにシーツを紐状にして結ばれ、ベッドヘッドに括り付けられた。ルイスはタイを外し、それからメレディスの体の上に跨った。
 このまま思う通りにさせてはいけない。その一心でメレディスは直ぐさま彼を睨みつけた。

「何だその目は! それが主人に対する態度か!」
「貴方を主だと認めていません。わたしはラファエル・ブラフマンの妻です!」
 メレディスは恐怖に押し潰されながらも必死に抵抗し、首を大きく振って猿轡を自ら解くと、声を張り上げた。
「これからはそうではなくなる」
 ルイスはメレディスの反抗的な態度がただのやせ我慢であるかを知っていた。彼は鼻で笑った。

「ヘルミナもそうやって力尽くで自分の良いように扱ったの?」


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