今宵は天使と輪舞曲を。
「あれは簡単だった。なにせ自分に自信が無かったからな。ちょっと甘い声をかければ簡単におれの言うとおりに動いてくれたよ」
「思ってもいないことを言って彼女を都合の良いように動かしたのね」
「ちゃんと事実も言ったさ。柔らかな肉体はたまらないって」
メレディスの問いに、彼はヘルミナとの行為を思い出したのかにやりと笑みを浮かべた。
「いつからヘルミナを口説いていたの」
「お前がラファエルと接近し出した頃だ。物欲しそうに男を見ていたから声をかけてみれば、すっかりその気になってくれたさ。『君と結婚したいがブラフマン家に入り浸っているから求婚さえままならない。社交界でどうにか会う算段をつけて正式に結婚を申し込みたいからおれが雇った人攫いを嗾けて妹を攫ってほしい』と言ったら彼女は言ったとおりに動いてくれた。だが、上手くいかなかった。誤算はラファエル。奴の行動力だ。あいつが邪魔だったから今度はラファエルを始末してほしいと頼んだんだ。そうしたら、あの女は馬丁を手駒にして見事ラファエルの馬を暴走させ、事故に見せかけようとした。実の姉さえも利用して、な。ヘルミナは実にいい駒だったよ。おれが抱く毎に彼女は自信をつけていったのか、まさか犯罪じみた行為すらもできるようになるなんて、おれすらも思いもしなかった。まあ、どれも失敗に終わったが――まあ、君とこうしてふたりきりになれたんだ。よしとしよう」