今宵は天使と輪舞曲を。

「――しかし、これはまた。週に一度と言ったが、おれが飽きるまで当分の間は抱いてやってもいいな。この触り心地といい、大きさもまさに理想的だ」

 愛してもない異性に抱かれる恐怖は計り知れない。怖じ気づきそうになる心を、それでもメレディスはなんとか抑え込んで口を開いた。

「ラファエルは来てくれるわ! 絶対に! そしてわたしは貴方の言うとおりには動きません!」
 それはとても毅然とした態度だった。世の中の男性はほとんどがそういう女性を嫌がる。このまま恐怖に泣き叫んでも事態は変わらないとメレディスはそう判断した。しかしその態度はルイスを逆上させるものだった。

「この女! たかが没落貴族風情が男爵のおれにそんな口を利いていいと思っているのか! 調子に乗るな!」
 ルイスはメレディスの左頬を思いきり叩いた。それでもメレディスは睨むことを止めなかった。どんなに顔が腫れて醜い姿になろうとも、それでも毅然とした態度を続ける。
 強い力で叩かれ続けているおかげで何度か意識が飛びそうになる。それでも必死に意識を戻して抵抗した。
「いいか、お前はおれのものだ」
「いいえ、わたしは誰のものでもないわ! わたしの意思もすべてわたしのものよ」
「愚かな。女は生まれつき男のものなんだよ! 男と女はそういうふうにできているんだ。泣き叫ぶしか脳のない女にいったい何ができる? 女はいつだって口先だけで何もやらないじゃないか! 現にお前は今、おれの目の前で素っ裸にされて減らず口を言うことしかできていない! 身の程をわきまえろ!!」



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