今宵は天使と輪舞曲を。
メレディスが生きていることを祈りながら探すしか他に手段はない。
「メレディス! メレディス、どこにいるんだ!」
きっと彼女はここにいるという確信だけが彼を突き動かす。
呼びかけても返事がないまま、ラファエルが途方に暮れていると、またもやおかしな空気に包まれた。灰色の煙に覆われた視界はとにかく頗る悪い――はずなのに、おかしなことに、視界の先に人影が佇んでいる姿がはっきりと見て取れた。しかも、これはまた不思議なことに、炎の勢いと声を掻き消すほどの音が消えた。
さらに不思議なのは、ラファエルが目を凝らし、人影を見つめると、煙の中を微動だにせず立ち尽くしている姿をはっきりと見て取れるようになったことだ。轟々とうねる炎の音や風の音が消え、静寂が訪れたこの中で現れたシルエットは細い。女性だ。
メレディスだろうか。そう思ってさらに目を凝らせば――いや、違う。
身長や体型はメレディスととてもよく似ているが、年齢はもう少し上だ。腰まである長いプラチナブロンドはひとつに束ねられ、目は空のようなどこまでも透き通った青をしていた。なぜ、この炎の中で目の前に佇む女性の目の色さえも分かるのだろうか。どこか憂いをもったその眼差しは悲しげだった。
彼女はいったい何が言いたいのだろうか。
ラファエル自身もこの状況に戸惑いながら、さらに一歩、女性へ近づくと、彼女は無言のまま右を指した。
たしかに通路が見える。その先には一室、開け放たれた空間もある。この女性はあそこに行けというのだろうか。