今宵は天使と輪舞曲を。
引き続き探偵にはルイスの居場所を突き止めるよう依頼しているが、奴を見つけたという朗報はまだ届いていない。
彼女の顔にできている傷の治りが遅い。それほどまでに内蔵の炎症がひどいのだろう。彼女の体はまず、外部よりも致命傷に近い部位から回復させようと必死に闘っているのだと分かる。彼女におかれている状況がどれほど恐ろしい事態であるのかは、素人のラファエルでも簡単に想像できた。おそらくは煙が肺に到達し、心臓に多大な負担がかかっているはずだ。
医師に診せても今の技術ではどうにもできないらしく、できて精々悪魔払いくらいだと言われた。
――悪魔払いなんてくだらない。
ラファエルは信仰心はあるものの、悪魔という存在を信じたことは一度もなかった。現に今、彼女が必要としているのは内蔵の手当てであって悪魔払いなどではないのだ
今、自分にできることといえば、ただ彼女の回復を祈るしかない。
ただ横たわる彼女の手を握り、見守ることしかできない自分の不甲斐なさがなんとも情けない。
「兄さん、メレディスの具合はどう?」
いつの間に入ってきたのだろうか、妹の声に我に返るラファエルは両手で顔を擦った。
「まだ目覚めない」
「少し眠ったら? 酷い顔よ。メレディスにずっと付きっきりでろくに寝てないでしょう? それにご飯もまともに食べてないわ。メレディスが目覚めた時、兄さんがそんな状態だと、とても悲しがると思うわ」
果たしてメレディスが目覚める日は来るのだろうか。もしかするとこのまま目覚めない可能性もある。ラファエルの心は不安と後悔に苛まれていた。