今宵は天使と輪舞曲を。
「もし、あの時――彼女をひとりにさせなければ、こんなことにはならなかったかもしれない」
目先の事件解決に急ぎすぎて見誤ってしまった。あんなに大切だと思っていた彼女をひとりきりにさせてしまったことが悔やまれる。メレディスを本当に大切だと思っているのなら――愛しているのなら、彼女の側に居てやるべきだったのだ。
「自分を責めるのはやめて! それを言うならわたしたちもそうだもの。彼女を残して外出してしまった――メレディス本人はもちろん、兄さんやお父様、お母様、わたしたち兄妹含め、皆疲労していたもの。事件解決に向けて焦る気持ちはとても分かるわ」
沈んだ深い沈黙の中、小鳥たちの囀りだけが流れる。
「きっと目覚めるわ。メレディスは強いもの。そうでしょう?」
ラファエルが妹の慰めに顔を上げ、無理にでも笑おうとした時だった。ラファエルは何やら一階が騒がしいのに気がついた。
「ヘルミナが警察の事情聴取から戻って来たのよ」
曇った表情で話す彼女の唇はへの字に下がっている。
ここで心優しいキャロラインがこの部屋にやって来た理由がようやく理解できた。妹はメレディスと自分を不安にさせないよう、こうして側にいてくれているのだ。
ラファエルは乱暴に顔を擦ると、立ち上がった。
「兄さん?」
「メレディスを頼む。彼女に詳しい話を聞いてくる」
「ヘルミナ、まだ動揺しているみたいだから、問い詰めるのは逆効果よ」
「分かっている」
そこまで言うと、ラファエルはメレディスが眠る部屋を出た。