今宵は天使と輪舞曲を。
あの事件以来、ヘルミナは取り乱した姿しか見せていない。おそらくはルイスにこてんぱんに打ちのめされたのだろう。それから、義理の妹に対しての罪悪感――よっぽどの悪女ではない限り、人は罪の意識に苛まれるだろうから。
ラファエルは、ヘルミナに対して怒りがないと言えば嘘になる。こうして愛する女性を意識不明の状態にさせているのは、そもそも彼女がメレディスを呼び出さなければ起こらなかったことだから。それでも、彼女の立場も少し理解できるような気もした。
母親は実の姉を溺愛し、彼女のことはそっちのけで、寧ろ容姿のことを散々馬鹿にされて日々を過ごしていた。それと相俟って彼女を大切にしてくれる男性が現れるはずもなく、心は荒んでいっただろうから――。
複雑な心境ではあるものの、ヘルミナと顔を合わせた時、メレディスをあんな姿に追いやった彼女を責めずにいられるかは不明だった。
階段を降り、騒がしい声がする方へ向かえば、どうやら争う声は談話室から聞こえてくるようだ。ラファエルが姿を現せば、とたんにその場は凍りついた。
ヘルミナの他に、エミリアとジョーン、そして両親と兄が揃っていた。
ヘルミナは母親に手を上げられたのか、エミリアの前に倒れ込んでいた。
「ラファエル、大丈夫か?」
自分はどうやら他人の目から見てもよほど疲弊しているのだろう。ラファエルを見た兄が心配しているが、それに答えるほど余裕がなかった。
「メレディスは……」
母親のレニアが口を開いた。