今宵は天使と輪舞曲を。

「お黙りなさい。貴女にそれを言う資格はありません!」
 レニアはぴしゃりと言ってのけた。エミリアは萎縮し、静かな沈黙が生まれた。
「続けてくれ。そもそもどうやってルイス・ピッチャーと知り合ったんだね?」
 父、モーリスは優しく、静かに尋ねた。
「彼、ルイスと出会ったのは、ラファエル・ブラフマン、貴方とメレディスがスキャンダルになったほぼ同時期よ。今にして思えばおかしいと思うべきだった……」

 ヘルミナは一度目を閉ざし、決意したように話しはじめた。

「わたし、見た目がこんなだから、男性の甘い言葉に酔ってしまったの。初めてだったのよ、女性として声をかけられたことも、美しいと褒められたことも。彼、ルイス・ピッチャーには社交パーティーで出会うたびに、ふたりきりになって甘い言葉を囁かれ続けたわ。それでつい有頂天になって彼の言葉を信じるようになったの。一緒になろうと言われて、とても嬉しかった。それなのに、メレディスが――わたしたちトスカ家は突然、ブラフマン家に招かれた。これでは社交界に足を向けることもできない。おかげでわたしたちは会うことが難しくなったわ。挙げ句の果てにはラファエル、貴方とメレディスが結婚するっていうじゃない! このままではルイスと会う口実は絶たれ、永遠に彼と会えず仕舞いになってしまう。プロポーズだってされて結婚も目前と迫っていたのによ!? だから彼に相談したの。どうすれば一緒になれるかって。そうしたら、メレディスを攫って売り飛ばしてしまえばブラフマン家に滞在することもなくなり、わたしはまた世間を憚ることなく会うことができると案を出してくれたの」


< 419 / 440 >

この作品をシェア

pagetop