今宵は天使と輪舞曲を。
「なんですって!?」
「やめなさい!」
ジョーンの手が上がる。ヘルミナ目掛けて振り下ろされそうになっていた寸前のところで、グランは彼女の手を掴んだ。
「もう彼女はとっくに傷ついている」
グランが話すと、ジョーンはその場に崩れ落ちた。
「ヘルミナ、貴女という子は!!」
ジョーンに代わって今度はエミリアが反論しようと口を開いた。
「お母様だってルイスと同じだわ! メレディスを使って世間からよく見られようとした。わたしたち子供はお金を得るための手段でしかない。愛しているのは子供ではなくお金。その証拠に金持ちや爵位のある男性をわたしたち娘の夫にさせようと血眼になって探し回っていたわ」
ヘルミナは続ける。その目にはもう何も写っていなかった。
ただの絶望。それしかない。
「結果は散々。悪いことは上手くはいかないものね。それでもまさかメレディスがラファエル、貴方を助けるとは思ってもいなかった。あの子はあんなにも勇敢だったなんて――」
「良くも悪くも、わたくしたちはメレディスを見くびっていましたね」
レニアは深く頷き、口を開いた。
たしかに、彼女の勇敢さには度肝を抜かれた。母親はその一件以来、メレディスをいたく気に入り、実の娘であるかのように可愛がっている。
「わたしが貴方たちの仲を引き裂こうとすればするほど、ふたりは強く結ばれてしまう。こんな結果、誰が予想していたと思う? 焦りに焦った結果、危険も顧みずルイスと会って、最後の計画に移ることにしたの」
「そして彼の計画は君がメレディスを呼び出すっていうことだったんだね」