今宵は天使と輪舞曲を。

「ええ、ルイスはわたしたち二人が愛し合っていることをメレディスに打ち明け、仲を取り持ってくれるようブラフマン家を説得してもらおうって言たの。馬鹿なわたしは彼が言うことを信じたわ。これで彼と一緒になることができる、そう信じて止まなかった。そして事件の当日、メレディスを人気のない納屋へ誘い出し、見事ルイスに引き合わせたわ。後は貴方が知っているとおりよ」
 彼女は視線を落とし、床を見つめた。一度は口を閉ざしたが、まるでひとりごとのように呟きはじめた。
「――わたし、ルイスと一緒になりたくて必死だった。それなのに、彼にとってわたしはただの駒にすぎなかった。あんなに愛の言葉を囁いてくれて、深く愛し合ったのに、すべては偽り。初めからわたしみたいな不細工な女に興味はなかったって、彼が愛しているのは地位やお金だけだった――」
 ヘルミナは唇を振るわせる。自分がいかに愚かな存在であるかを確認するかのような、そんな閉鎖的な口ぶりだ。
「だからわたしは貴女に散々痩せなさいって言ったでしょう!! 痩せていたらこんなことにならなかったのよ!」
 怒りと悲しみを含んだエミリアの言葉はこの場では場違いだ。そう判断したラファエルは彼女を遮った。


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