今宵は天使と輪舞曲を。
さらには彼に無理矢理抱かれそうになり、カーテンを引いて抵抗し、ランプに引火して炎の渦に巻き込まれたことが蘇った。
「ラファエル兄さんが駆けつけた頃にはルイスの別荘が火事になっていて、貴女はその中で倒れていたの。兄さんが助け出してくれたのよ」
「ラファエルが――?」
キャロラインの言葉から、メレディスはラファエルを探した。
しかし彼の姿が見えない。
まさか――。
嫌な予感が脳裏に過ぎる。
「ラファエル! ラファエルは!?」
自分を助けるために彼が犠牲になったというのだろうか。
自分の身代わりで彼を失うのはあまりにも辛く、悲しい。
メレディスは痛む体に鞭打ってベッドから起き上がろうとした。慌てたキャロラインはメレディスの上体を起こすのを手伝いながら、声を張り上げた。
「ああ、違うのよ。兄さんはとてもピンピンしているわ。今は少し一階にいて――」
メレディスに気がついたキャロラインは彼女の背中を支える。
「ラファエルに会いたいわ」
けっしてキャロラインの言葉を信じていないわけではないが、それでもラファエルの顔を一刻も早く見て、安心したかった。
メレディスは掠れた声で訴えた。
「そうね、眠り姫が目覚めたっていうのに王子様がこの場にいないのはとてもおかしいわね」
キャロラインは深く頷いた。メレディスは声を出して笑おうとしたが失敗に終わった。咳き込んでしまう。
「まだ完全には回復とはいかないのね、きっと」