今宵は天使と輪舞曲を。
健康体ではない自分にほんの少し苛立ちを感じたメレディスに、キャロラインは静かに背中を擦り、宥める。
「無理もないわ。だって貴女、屋敷が全焼するほどの炎の中にいたのよ? それでもこうやって生きていることの方が奇跡よ」
「ラファエルの顔が見たいの、お願い」
キャロラインに縋り、必死に懇願するメレディスの願いを彼女は快く引き受けてくれた。
「わかったわ、王子様に会いにいきましょう」
「ええ」
静かに微笑むメレディスに、キャロラインがローブを着せてくれた。
メレディスはキャロラインに手を引かれるがまま、おぼつかない足取りでゆっくり、丁寧に階段のひとつひとつを踏んでいく。
一週間も寝たきりになったことで栄養が摂れていないのはもちろんではあるが、体中の筋肉がうまく働いてくれていない。階段の下はすでに視界の先に捉えられているというのに、なかなか先に進めない。それはとてつもなく長い回廊のように思えた。
何度も転げそうになるメレディスの体を、キャロラインは細い腕でしっかり支えながら、もう少しだからと辛抱強く声を掛けてくれる。その姿がメレディスにはとても有り難かった。
最後の一段へと足を伸ばそうとした時だった――。
「彼女に会わせろ! 彼女はぼくと結ばれたんだ」
今、一番聞きたくない耳障りな野太い声がエントランスの方から聞こえた。
先ほど目覚めた時にも微かに聞こえたあの声だ。その声を認識したとたんにメレディスは顔を顰めた。