今宵は天使と輪舞曲を。

 その人物に対するとてつもない嫌悪感がメレディスを襲う。

 ルイス・ピッチャー。
 彼は炎に包まれたメレディスを見捨て、自分可愛さにさっさと逃げていった。ルイスとは何が何でも絶対に一緒になりたくもないし、今、現時点であっても同じ空気を吸うことさえも気持ち悪くてしょうがない。
 彼が誇っている筋肉質な二の腕と大きな体つきも、あの耳障りなバリトンも、すべてを感じ取った瞬間、自分を支えてくれているキャロラインの手をすり抜けると、対峙しているラファエルの隣に立った。
 苛立ちが込み上げてくるメレディスを隣に、ラファエルは驚きと喜びが絡まり合った複雑な表情をこちらへ向けたが、ルイス・ピッチャーがいる手前、険しい顔をしてメレディスに顔を横に振った。

 ――今は来るべきではない。
 彼は暗に告げているが、深い苛立ちを感じているメレディスは彼の言うことを聞けなかった。
「メレディス……起きたのね」とエミリア。彼女は何の抑揚もなく、ただ唖然とした表情で告げた。
 この場には、ラファエルとキャロライン、それからルイスの他にエミリア、義姉のジョーンにヘルミナ、それから執事(バトラー)とメイド長であるベスがいただけで、どこに行ったのだろうか主人であるモーリスとレニア、長男グラン。それから家令(ハウス・スチュワート)の姿は見当たらなかった。
 季節は初夏ではあるものの、周囲に冷たい空気が漂うっている。

「ああ、なんだメレディス。起きているじゃないか! やあ、ダーリン!」
 いったい誰が誰のダーリンなのだろう。
 メレディスの姿を視界に入れた瞬間、バリトンの声は甘い声を出し、両手を広げた。


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