今宵は天使と輪舞曲を。
「彼はおれの話に聞く耳を持たないんだ。おれたちは愛し合っているのだと君の口から言ってやってくれないか?」
その言葉を聞くなり、メレディスと同じくらいの嫌悪感を丸出しにしたのはヘルミナだった。彼女は嫁入り前でありながら、とても行儀良く鼻を鳴らした。
彼は明らかにヘルミナを警戒している。その証拠に、彼女が鼻を鳴らした瞬間、表情が強張った。
それもそのはず、ヘルミナは事件のすべてを知っている。
人攫いを雇ったこと――。
メレディスを襲わせたこと――。
さらには
彼女に供述されては困ることばかりだ。
それでも彼は余程の自信過剰家らしい。ほんの少しの間、表情を強張らせたものの、ひとつ咳払いをするとふたたびメレディスに視線を戻した。
「おれの庇護の元で過ごすのが君の望みだろう? 女性は誰もが男に囲われ、欲しい物を手にして過ごすのが好きなんだ」
調子の良いバリトンで彼は話す。
「いいえ、ミスターピッチャー。貴方の顔は二度と見たくはなかったわ」
苛立ちを隠すつもりもないメレディスは、冷ややかな声で答えた。
「おれの別荘ではあんなに激しく求めてくれたじゃないか!」
――求める? わたしが? 誰を――?
メレディスは自分の耳を疑った。
「わたしを無理矢理攫って? 冗談でしょう?」
彼にされた仕打ちを思い出せば思い出すほどに、さらに怒りが込み上げてくる。
「それに貴方、わたしを置いて逃げだしたじゃない? そんな奴をどうやって愛するというの?」