今宵は天使と輪舞曲を。
「逃げたんじゃないよ、ダーリン。ぼくは人を呼びに行っただけさ。もちろん、君を助けるためにね」
日に焼けた浅黒い肌に見える白い歯もたまらなく気持ち悪い。
「いいえ、貴方は逃げだした。わたしを助けてくれたのは貴方ではありません、自らの命を省みず、炎の中に進んで助けてくれたのはラファエル・ブラフマン。わたしの夫よ!」
メレディスがぴしゃりと言えば、ラファエルの腕がメレディスの腰に回ったのを感じた。
そう、ラファエル・ブラフマン。彼こそがメレディスの夫となる運命の男性だ。けっして自分の利己的な欲望のために女性を思うがままに動かそうとする浅はかで醜い男性ではない。
「いい加減にしろ! ルイス・ピッチャー。君を殺人未遂で訴える」
ラファエルは静かに、けれど力強い声で彼に警告した。
「ラファエル・ブラフマン、我が妻を炎の中から救ってくれたことには感謝するが、訴えるとは尋常じゃないな。第一、ぼくがメレディスを攫ったという証人もいないじゃないか」
この一件を知っているのは当事者のメレディスとルイス本人。そしてヘルミナだけだ。しかしヘルミナはメレディスのことを快く思ってはいない。それをいことに、この件を訴えるのに証人がいないことを指摘した。
しかし、ルイスの考えを見事に覆したのは、ヘルミナだった。
「わたしが証人になるわ!」
今まで黙って事態を見守っていた彼女だったが、一歩前に進み出ると、しっかりとした口調で話した。