今宵は天使と輪舞曲を。
騒がしい声がようやく遠ざかり、朝の静けさが戻った。
メレディスは気が抜けたのか、両足に力が入らなくなった。
「メレディス、大丈夫かい?」
倒れそうになるメレディスをすんでのところでラファエルが支えてくれた。
「ええ、少しふらついただけ」
彼はゆっくり自分の膝の上に座らせてくれた。ラファエルと視線が重なれば、安堵のため息が漏れた。やっと自分の家に戻れたという何とも言えない安心感がたしかにあった。そして同時に彼が自分の夫なのだと思えば、とても頼もしい気持ちにもなった。
「ラファエル、助けてくれてありがとう」
「こういう処理には慣れているよ」
彼は、メレディスが感謝したのは自分が眠っている間、図々しくやって来たルイスを足止めしていたことだと思ったらしい。やれやれと言わんばかりに両肩を竦めて口を窄めた。
「だけどぼくは君が強いのも知っているけれどね」
続けて話すおどけた口調は、メレディスがよく知っている、いつものラファエル・ブラフマンだった。
「ラファエル、茶化さないでちょうだい」
メレディスは笑いながら首を振り、彼を見上げた。
「貴方、炎の中でわたしを助け出してくれたでしょう?」
「ああ」
なんだ、そんなことか。とでも言わんばかりの返事は、なんだか素っ気ない。けれどもメレディスは知っていた。彼の中で、メレディスが命の危険を伴う中での助け出すことは当然なのだ。
彼は自分の命さえも厭わず、メレディスを助け出す。それはメレディスにとってもそうだった。