今宵は天使と輪舞曲を。
「ぼくもそうだ。君を失うと感じた時、ぼくの心臓が張り裂けんばかりに痛んだ。もう二度とこんな思いはごめんだ」
「そうね、わたしもよ」
ふたりはリップ音を伴ったキスを交わし、そうしてメレディスはそっと彼の首に顔を埋めた。
「そういえば、君を助けに炎の中に入った時、君に似た女性を見たよ。年齢はおそらく三〇代くらいかな、腰まである髪は金で、目の色はブルーサファイアのようであったけれどね、雰囲気がとにかく君にそっくりだったんだ。だけど彼女はあの燃え盛る炎の中をすぐに居なくなってしまったんだ。彼女、いったい何処へ行ってしまったのだろう」
彼の指がメレディスの唇をなぞる。耳元でそっと囁かれてメレディスの体がぞくぞくした。
それでもラファエルの話が気になるのも事実で、おかげでラファエルの言葉を理解するのに時間がかかってしまった。
三〇代の女性、金髪に青い目。
「わたしに似た女性? もしかして――でもそんな……」
思い当たる人物像はただひとり。けれど彼女はもうこの世界にはいない。メレディスが八歳の時に旅立ってしまった。
そんなことはない――はずだ。
「あと、もうひとり。君のお父さんって、君と同じグレーの目をしていなかったかい?」
彼はいったい何を言おうとしているのだろうか。
「どうしてそんなことを聞くの?」
「答えてくれ、大切なことだ」
「そうね、お父様はわたしと同じ目の色をしていたわ。背はラファエルよりも少し低いかしら……」