魔王と王女の物語
――太陽の光の下に出れば、その可愛らしさ、可憐さがより際立つはずなのに…


ラスは小屋の下を通り、影を伝いながら、小屋の中で掌にひよこを乗せて立っているコハクの前に立って見上げた。


「これ、チビのお気に入りの奴だろ?」


「よく覚えてたね。コー、お腹空いちゃった…」


「俺はずっと空いてるんだけど。メインディッシュが食べれねえからさ」


「?そうなの?」


くつくつと笑い、ラスの頭の上にひよこを置いて楽しんでいるコハクをエリノアが愛しそうな眼差しで見つめる。

…恋に落ちるのに時間は関係ない。

身を以て教えてくれた男だ。


「ラス、おはよう」


「リロイだ、おはよ」


――満面の笑みで、頭にひよこを乗せたまま駆け寄ってきたラスを見て…

リロイは猛烈な罪悪感に襲われながら、そして思い知らされる。


目の前に立っている少女のことをとても愛しいと思う。

…ティアラとはキスをしてしまったが、それ以上の関係には絶対にならないと誓って眠った。

ラスのことが、大好きだ。

ラスを妻にするために、白騎士団の隊長になって地位を手に入れて…求婚すると小さな頃から誓っていたのだ。


「ねえラス…、ぎゅってさせて?」


「え?うん、いいよ」


無頓着に抱き着いてきたラスの小さな身体を抱き上げて頬にキスをすると…

案の定ものすごい形相の魔王が憤然と近寄って来て、ラスを抱っこしたままリロイが逃げる。


「きゃーっ、鬼ごっこ!?」


「そうだよ、魔王に捕まったらアウト!僕にちゃんとしがみついててね」


やっぱりラスの中では“勇者様”に見えて、頬にキスをし返すと…魔王が吠えた。


「チビ!ばい菌が移るぞ!」


「リロイは真っ白で金色で、綺麗だもーん」


「…真っ黒で悪かったな」


唇を尖らせて拗ねてしまった魔王は追うのをやめて、エリノアの肩を抱いてべたべたしまくりだした。


「こ、コハク様…」


「コー、やだ!」


我が儘気質の天然お姫様がリロイの腕から降りてコハクに駆け寄ると腕に抱き着いた。


「嘘だっつーの」


「馬鹿!コーの馬鹿!」


大満足。
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