魔王と王女の物語
あっけらかんと割り切ったラスの機嫌が戻り、

ティアラはやや表情が曇ったままだったが、また魔王を差し置いて2人で互いの国のことを話し合う。


その間魔王はラスの膝枕でいつも懐に忍んでいるベルルを取り出して遊んでいると、ベルルを触りたくて仕方のないラスが2人の仲に言及した。


「ねえコー、ベルルとはどこでお友達になったの?」


「ああ、妖精の城が魔物に襲われた時に助けてやったんだ。ついて来んなつってもついて来るから小間使いに使ってる」


「小間使いだなんて失礼な。コハク様と私にはれっきとした身体の関係が…むぐむぐっ」


人差し指でコハクから口を塞がれてもがいているベルルの言葉の意味は、ティアラには伝わっていたがラスには伝わっておらず、

きょとんとしたままのラスの首に腕を回して引き寄せると、可愛らしい唇をぺろっと舐める。


「ボイン、あっち向いてろ」


「い、いやよ。ラスっ、いやならいやってはっきり言った方が…」


「?どうして?これは“友情の証”だもん」


「そうそう、友情の証ってやつ」


…とてもそんなレベルではなかったのだが、

この魔王…恐ろしく顔が整っている。

そしてラスも各国に名の轟く美姫として有名で、

そんな2人が目の前で…キスをしていた。


…昨晩はリロイとあんなキスを自分もしたのだ、と思い返してしまい、ティアラの顔が真っ赤になって両手で口元を覆ったが目が逸らせない。


「…なんだ?物欲しそうな顔してんな。“友情の証”、してやろうか?」


「い、要らないわ!誰がお前とキスなんて…」


「キスじゃないよ、“友情の証”だよ。…でも…してほしくないな…」


ぽつっとラスが呟き、魔王が妖しく笑う。


徐々に女として目覚めつつあるラスを生まれた頃から見守っているコハクとしては、それはもう感慨深いことで、


さらに唇を重ねてティアラが悲鳴を上げそうになった時――馬車が止まった。


「どうしたのですか?」


「中に居て下さい。…気配がします」


静かに魔法剣を抜いたリロイの横顔は緊張していて、魔王が欠伸をした。


「魔物だな。お前ら中に居ろよ」


外に出た。
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