魔王と王女の物語
ついでに小休憩を取ろうということになった。


…ティアラとは会話を交わすが、リロイとは交わさない。

これはラスの徹底的な遠慮が原因で、魔王はそれが面白くて仕方がなかったが…

当のリロイは焦がれ死にしてしまいそうな思いでラスを見つめる。


「ねえ、コーのお城に着いたら私の影から居なくなるんでしょ?…影から居なくなってもずっと一緒に居てくれるんでしょ?」


「ああ、永遠にずっと一緒だ。ま、お前にゃまずやってもらうことがあるんだけど簡単だから身構えなくていいぜ」


不器用なりにラスが右頬にガーゼを貼ってくれて、それが最高に嬉しかった魔王は何度も手鏡で自分の顔を見るとにやにやしていた。


「簡単ならいいの。あとコーって私が小さい時から年を取ってないみたいだけどどうして?」


ビスケットをかじりながら見上げるラスと頬にキスをする魔王の光景にまたリロイがむかむかしている顔を見てほくそ笑みながら、

両膝を立てて木の幹に寄りかかっているその脚の間にすっぽりとラスが収まってきて、その体勢に魔王、コーフン。


「外見は今後変わることはないな。この術を使えるのは俺しか居ないんだ。すげーだろ」


「すごーい。じゃあ私が先に死んじゃうの?コーが看取ってくれるの?」


「看取らねえよ。お前にも術をかけて、俺たちは永遠に一緒だ。いやか?」


――考えるまでもなく即座にラスが首を振ったので、


魔王、野獣になる一歩手前。


「ずっと一緒ならいいの。約束だよ、絶対に離れてかないでね?」


「ラス、そんな約束しちゃ駄目だ。不死の術なんて不気味すぎるし、人間は寿命で死んでいくのが自然なんだよ。僕がずっと傍に…」


「リロイはティアラの“勇者様”なんだから駄目だよ。私だって“勇者様”を見つけたいもん。コーが“勇者様”ならいいなって思ってるし…」


――その言葉を聞き逃さなかった魔王は、べったりとラスの身体に腕を回してリロイに見せつけるように首筋にキスをした。


「影、貴様…!」


「お前はチビの“勇者様”じゃねんだから口出しすんなよ。なー、チビ」


「うん」


リロイは血が出るほどに唇を噛み締めた。
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